自己破産をする際は、処分されてしまう財産も多いです。給料も例外ではありません。
そのため、「自己破産をしたら給料を差し押さえられてもらえなくなってしまうのではないか」という不安を抱く方も少なくありません。
自己破産をした際の給料の処分については、「いつ支払われる給料か」が大きく影響します。
この記事では、自己破産をしてももらえる給料、処分されてしまう給与について弁護士が詳しく解説していきます。
監修
弁護士法人サンク総合法律事務所
弁護士 中島 大地
自己破産しても給料を処分されないケース
自己破産をしても給料やボーナスをすべて処分されてしまうわけではありません。
自己破産をするまでに支払われた給料は、自己破産をすることで処分されてしまう可能性がありますが、破産手続き開始決定後に得た給料やボーナスは「新得財産」とされ、原則として差し押さえられることはありません。
差し押さえの対象とならない「自由財産」に該当するからです。
給与が処分されないタイミング
新得財産になる給料は、破産手続き開始決定後に支払いが確定した給料です。
破産手続き開始決定後に支払われる給料でも、破産手続き開始決定前に支払いが確定していると、処分の対象になる可能性があります。
たとえば、毎月月末締め、翌月25日払いの方の場合であれば以下のようになります。
| 4月10日に破産手続き開始決定した場合 (毎月月末締め、翌月25日払い) | |
| 4月25日支払いの給料 | 処分の対象になる |
| 5月25日支払いの給料 | 処分されない(新得財産になる) |
4月25日支払いの給料は、支払日は破産手続き開始決定後ですが、開始決定前の3月末に給与の支払いが確定しているため、処分の対象になります。
一方で5月25日支払いの給料であれば、破産手続き開始決定後に支払いが確定しているため新得財産となり、処分の対象にはなりません。
これ以降の給料も同じように処分はされません。
自己破産で給料が処分されてしまうケース
新得財産となる給料であれば処分されませんが、破産手続き開始決定前に支払われた給料や、支払いが確定した給料は処分されてしまう可能性があります。
この章では、自己破産で給料が処分されてしまうケースについて詳しく解説していきます。
自己破産申立前に受け取った給料は現金・預金と同じ扱い
自己破産を申し立てる前に受け取り済の給料は、現金・預金として扱われます。
そのため、申し立てをする裁判所によって異なりますが、現金であれば99万円、預金の場合には20万円を超えると処分の対象になるケースが多いです。
け取り予定の給料は一部が処分の対象となる
破産手続き開始決定時点で、支払いが確定している給料は、たとえ受け取り前であっても原則として処分されてしまいます。
ただし、給料全額が処分されるわけではありません。
処分の対象となるのは手取り額の4分の1で、4分の3は受け取ることができます。
たとえば、手取り額が20万円であれば、5万円が処分され、15万円は受け取り可能です。
なお、この場合に受け取れる額の上限は33万円と決まっており、収入が多い方は4分の1以上の給料を処分されることもあります。
自己破産前の滞納で給料を差し押さえられる?
前の章までは自己破産をした際の給料の処分について解説しましたが、ここでは自己破産前から滞納をしている場合の給料への影響について解説をします。
自己破産をせずに借金の滞納を続けることは避ける
自己破産をすると給料や現金を差し押さえられてしまうことを恐れ、自己破産をためらう人もいるかもしれません。
しかし、既に借金返済を滞納しているなら、給与の差し押さえを恐れて自己破産をしないのは得策ではありません。
滞納が原因でも給料は差し押さえられてしまう可能性があるからです。
返済を滞納すると債権者から督促が来るようになり、それでも滞納を続けると債権者は裁判所に支払督促申立てや訴訟提起をすることによって、最終的には給料を差し押さえられてしまいます。
滞納が続く状況で自己破産を後回しにすると、給料を差し押さえられてしまう可能性があるのです。
自己破産をしても、せずに滞納を続けても給料の差し押さえを受けてしまうのであれば、早く自己破産をして生活再建を図ったほうが良いでしょう。
自己破産で処分の対象になるのは給与の一部ですし、破産手続き開始決定以降の新得財産は影響を受けないからです。
また、早いうちに決意をすれば自己破産以外の債務整理で解決できる可能性があり、その場合は給料への影響を回避できる可能性もあります。
差し押さえは自己破産で中止できる
借金返済の滞納が続いていて、既に給料を差し押さえられてしまっている場合も早く自己破産をすることをおすすめします。
自己破産をすることで給料の差し押さえを中止できる可能性があるからです。
自己破産には複数の方法がありますが、同時廃止で自己破産を行う場合、破産手続き開始決定後に開始決定正本及びこれを停止文書とする旨の上申書を執行裁判所に提出することによって執行手続きは中止されます。
その後、免責許可が確定するまでは勤め先などで給料がプールされ、免責許可決定後、免責許可決定正本及び確定証明書並びにこれを取消文書とする旨の上申書を執行裁判所に提出することよって、執行処分が取り消され、給料を満額受け取ることができるようになります。
また、管財事件で自己破産をする場合も、破産手続き開始決定のタイミングで開始決定正本及び、これを取消文書とする旨の上申書を執行裁判所に提出することによって執行処分は中止され、その後はいつも通りに給料を受け取ることができるようになります。
給料を守るための自己破産以外の選択肢
自己破産は借金問題を解決するための選択肢の一つですが、給料や手元にある財産への影響を防ぎたいのであれば、任意整理や個人再生のほうが適している可能性があります。
この章では、自己破産以外の解決策について解説をしていきます。
任意整理と個人再生は給料を処分されない
自己破産をすると支払い済みの給料や、支払いが確定している給料は処分の対象になる可能性があります。
一方で、任意整理と個人再生は、手続きを行っても処分されることはありません。
手続き後の給料は今まで通り受け取ることができますので、給料に影響することなく、借金問題を解決できる可能性があります。
任意整理は将来の利息をカットできる可能性がある
任意整理は債権者と直接交渉して将来の利息などをカットし、元本の返済を3〜5年の分割払いで行う手続きです。
自己破産のように借金の返済が免除されるわけではありませんが、裁判所を通さず債権者と債務者が直接交渉するため、比較的容易に進められる債務整理となっています。
個人再生は借金を大幅に減額可能
個人再生は裁判所を通じて借金を大幅に減額し、原則3年の分割払いで返済する手続きです。
個人再生も借金の返済は続きますが、借金額を5分の1〜10分の1程度に減額することができ、自己破産に比べて財産や給料への影響も少ない手続きです。
任意整理は差し押さえをストップできない
既に給料の差し押さえを受けている場合、自己破産をすることで差し押さえをストップできることをお伝えしました。
これは、裁判所に申し立てる債務整理でのみできることで、債権者と直接交渉する任意整理では給料の差し押さえをストップすることはできません。
そのため、既に給料の差し押さえを受けている場合は個人再生や自己破産を検討したほうがよい可能性があります。
個人再生は差し押さえをストップできる
個人再生は、自己破産と同じように手続きを行うことで給料の差し押さえをストップできます。
裁判所に個人再生の申立てを行い個人再生手続開始決定が出た時点で、開始決定書を添えて執行裁判所に執行停止の申立を行うことによって差し押さえはストップします。
弁護士などの専門家に相談して解決策をアドバイスしてもらう
給料を差し押さえられそうになっているが、どの債務整理を選んでよいか分からないという方は、一人で悩まずに速やかに弁護士や専門家へ相談しましょう。
個々の状況に応じた具体的なアドバイスを提供してもらえます。
自身の負荷を抑えた最適な手段を選ぶためにも、一度弁護士に相談してみてください。
ボーナスは給料と同じように扱われる
ここまでは自己破産をした場合の給料への影響について解説してきましたが、ボーナスが支給される場合のボーナスへの影響も基本的には給料と同じです。
破産申立前に確定していたボーナスは処分の対象になる可能性があり、申立後に確定したボーナスは新得財産になるため処分されません。
給料と違い、ボーナスは年1回、年2回の支給であることがほとんどでしょうから、ボーナスが支給される会社に勤めていて自己破産を検討中の方は、ボーナスが確定する前に破産手続き開始決定が出るように自己破産をすれば、処分されることなくボーナスを全額受給できる可能性があります。
自己破産をした場合、退職金は全額または一部が処分の対象に
給料やボーナスだけでなく、退職金も自己破産をした際の処分の対象となります。
退職金は受け取るタイミングによって全額または一部が処分の対象になり、在職中でまだ退職金を受け取る予定がなくても処分の対象になることがあります。
処分の対象となる退職金については下記の表をご参考ください。
| 状況 | 処分の対象となる金額 |
| 既に退職金を受け取り済 | 現金と同じ扱いで処分の対象に |
| 退職金の受け取り予定日が決まっている | 退職金額の4分の1 |
| 在職中で受け取り日が未定 | 退職金額の8分の1 |
但し、在職中で受け取り日が未定の場合には、破産者を退職させてまで退職金を処分対象とすることはありませんが、その代わりに上記の金額を破産財団に組み入れる必要があります。
まとめ
自己破産をした際の給料への影響、滞納で給料に影響が出そうな際の自己破産について解説しました。
自己破産の申立て前に確定した給与やボーナスは処分の対象となりますが、破産開始決定後に得た給与・ボーナスは新得財産として保護されるため差し押さえられることはありません。
自己破産は、借金を返済できなくなった方が生活を再建するための手続きですが、給与や財産が処分されるなど、様々なデメリットがあります。
そのデメリットを少しでも減らすために、情報収集をきちんと行った上で自己破産を行うことが大切です。
もしわからないことがあれば、私たち弁護士にご相談ください。
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