自己破産をすると、一般的に、99万円を超える現金や20万円を超える預貯金や有価証券類のほか、価値のある財産は差し押さえられて残債の返済に充てられると考えましょう。
では、パソコンは「価値のある財産」として没収されてしまうのでしょうか?
パソコンはフリーランスで働く人などにとっては必要不可欠なもの。没収されてしまうと自己破産後の生活に大きな影響を及ぼすでしょう。
本記事では、「自己破産をするとパソコンは没収されるのか」に加えて、パソコンを没収される可能性のあるケースやパソコンを没収されずに借金を軽減できる方法についても解説しています。
自己破産で何が没収されて何を残せるのか気になっておられる方は、ぜひご参照ください。
監修
弁護士法人サンク総合法律事務所
弁護士 淺海 菜保子
自己破産するとパソコンは没収される?
自己破産をしても、基本的には、自分が持っているパソコンが没収される可能性は高くありません。
その理由は、破産法第34条3項では、民事執行法131条に準ずる形で「差押禁止動産(法律で差し押さえることを禁止された財産)」が規定されていますが、パソコンは差押禁止動産の規定のうち、以下に該当すると考えられるからです。
- 生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
- 仕事に欠くことができない器具・産物等
- 債務者等の学校その他の教育施設における学習に必要な書類及び器具
差し押さえは借金の回収が目的であって、債務者を罰するためのものではありません。
そのため、債務者が生活できなくなる可能性がある差し押さえは行われません。
仕事でパソコンが必須の方はもちろん、プライベートでパソコンを使用していた方も、自己破産後もパソコンを所有し続けられる可能性が高いでしょう。
参考:破産法|eGov法令検索
自己破産によってパソコンが没収される可能性のあるケース
自己破産しても基本的にパソコンは没収されないと考えられますが、場合によっては没収されるケースもあります。
それは、以下に該当するケースです。
- 価値が20万円を超える場合
- 複数台のパソコンを所有している場合
- ローンの返済中である場合
それぞれについて解説します。
ケース1.価値が20万円を超える場合
自己破産で差し押さえられる財産にあたるかどうかの判断の目安として、その財産の価値が20万円を超えるかどうかという点が挙げられます。
そのため、中古でも高額で売却できるパソコンの場合は、差し押さえの対象となる可能性があります。
特別な機能がついていないパソコンは、減価償却も含めて考えると20万円以下の資産価値であることがほとんどですので、あまり気にしなくてもよいでしょう。
しかし、ゲーミングPCやBTOパソコン(受注生産のパソコン)などは価値が20万円を超え、没収されてしまう可能性があります。
ケース2.複数台のパソコンを所有している場合
一般的にパソコンは一台あれば事足りると判断されるため、パソコンを複数台所有している場合は財産的価値の高いほうを差し押さえられるかもしれません。
とはいえ、差し押さえられるのはあくまで財産的価値があると判断された場合のみなので、古いパソコンや減価償却しているパソコンなら手元に残せる可能性もあります。
ケース3.ローンの返済中である場合
パソコンに限らず、ローンで購入した商品には、一般的には「所有権留保」がつけられています。
所有権留保とは引渡しを終えた目的物の所有権を代金が完済されるまで留保することをいい、売主が売買代金を担保するための措置となります。
そのため、所有権留保がついている物は、分割金を完済するまでは、厳密には、自分自身の物ではないと考えましょう。
パソコンなどの少額割賦契約は債権が放棄されてそのままになる可能性もありますが、ローンの返済が終わっていないパソコンは没収される危険性があるといえます。
この場合、破産管財人が差し押さえるのではなく、販売会社やローン会社が所有権に基づいて引き上げの手続きを進めることになります。
自由財産の範囲の拡張により処分対象のパソコンも残せる可能性がある
もし、前章でお伝えしたケースに該当し、パソコンが処分されてしまう可能性があっても、「自由財産の範囲の拡張」によって、パソコンを手元に残すことができるかもしれません。
自由財産の範囲の拡張とは、「本来は自由財産に該当しない財産を、破産者の生活の保障を図ることを可能にするため、自由財産として取り扱う」というものです。」
自由財産の範囲の拡張は裁判所での手続きによって行われます。
自由財産の範囲の拡張が認められれば、その財産は破産者が自由に管理・処分できるようになります。
たとえば、東京地裁では家財道具全般にも自由財産の範囲の拡張が認められています。
財産的価値が20万円を超えるパソコンや2台目以降のパソコンも、仕事や生活で必要であると裁判所に認められれば、そのまま残せる可能性が高いでしょう。
パソコンを確実に残しながら借金を軽減できる自己破産以外の方法
自己破産をすると、パソコンなどの仕事や生活に必要な物が没収されてしまう可能性もゼロではありません。
また、パソコンは守れたとしても他の財産を没収されてしまい、大きな影響を受ける可能性もあります。
そのため「やはり自己破産は避けたい」と考える人もおられるでしょう。
自己破産でパソコンなどを差し押さえられるのをどうしても避けたいという場合は、自己破産以外の債務整理で自分の借金トラブルを解決できないか検討してみましょう。
任意整理
任意整理とは、裁判所を利用せず債権者(貸主)と債務者(借主)との話し合いで借金の返済方法・金額などを決め直す債務整理の方法で、借金の利息の支払い免除または減額が認められる可能性もあります。
任意整理は自己破産とは異なり、対象の債権を選択することができます。
そのため、パソコンのローンを返済中で、そのパソコンはどうしても手元に残したいのであれば、パソコンのローンを任意整理の対象から外すことができるのです。
そして、パソコンのローンについては任意整理せず、しっかりと返済を続けていけば、引きあげられることはありません。
個人再生
個人再生とは、裁判所に申し立てを行い、それが認められると、一般的には、借金を1/5~1/10程度まで減らすことができる手続きです。
自己破産の場合、20万円を超える価値のある財産は換価処分の対象になりますが、個人再生であれば財産を処分される心配はありません(もっとも、資産価値の高い財産を持っている場合、借金の減額幅に影響が出る可能性があります)。
ただし、ローン返済中のパソコンがあると、自己破産と同じく販売会社やローン会社が所有権に基づいて引き上げる可能性がありますので注意しましょう。
まとめ
自己破産をしても、すべての場合でパソコンを差し押さえられるわけではありません。
仕事用、プライベート用に関係なく、自己破産後も手元にパソコンを残せる場合が多いでしょう。
ただし、財産的価値のあるパソコンを持っている場合、複数のパソコンを持っている場合など、パソコンが差し押さえられてしまうケースもあります。自分の場合はパソコンを手元に残せるのかどうかが不安であれば、一度、弁護士に相談してみましょう。
借金整理の経験が豊富な弁護士であれば、個々の状況を踏まえて、パソコンが残せるかどうか、引き上げられる危険性が高いか否かのアドバイスをすることができるでしょう。
任意整理や個人再生の場合ならどうなるかなど、ほかの手続きについても検討できるかもしれません。
自己破産を検討するほど、借金にお悩みであれば、ぜひ弁護士の無料相談をご利用ください。