
「自己破産をすると個人事業主にはなれないのだろうか」このような疑問をお持ちの方もいませんか?
自己破産後、企業に務め続けるのが難しいケースや起業に興味がある場合、独立してフリーランスとして働く方法があります。
一部の資格や職業には制限がかかりますが、該当しない職種であれば個人事業主になることは可能です。
本記事では、自己破産後に個人事業主として活動する際のポイントや注意点を解説しているので、ぜひ参考にしてください。
監修
弁護士法人サンク総合法律事務所
弁護士 堀川 民人
自己破産後に個人事業主になることは可能
破産の手続きにより免責が確定した後、法律上は新たに事業を始めることに対する制限・規制はありません。
そのため、自己破産後に個人事業主として独立・開業することは可能です。
自己破産の履歴があると、金融機関からの融資を受けるのが難しくなったり、取引先・顧客からの信用を得るためにより一層の誠実さが必要になったりします。
ですが、後述するような資金面で注意すべきことや個人事業主として独立しやすい職種、独立のタイミングなどを把握して適切な準備を行えば、自己破産後に個人事業主として働いていける可能性は十分にあります。
新しく個人事業主になる方も、これまで個人事業主で今の仕事を継続したい方も、自己破産後に個人事業主として働くことに何ら問題ありません。
自己破産後に個人事業主になると直面しやすいデメリット
自己破産後に個人事業主として働くことは可能ですが、自己破産していることを理由に気を付けるべき点があります。
これから開業する方は以下のデメリットを把握しておきましょう。
金融機関からの資金調達が難しい
自己破産すると、金融事故の情報が信用情報機関に登録されます。
いわゆる「ブラックリスト」に載っている状態のため、履歴が消えるまでの間はクレジットカードを使えず、借り入れもできないのが通常です。
個人の借り入れに対する制限だけでなく、事業目的の融資であっても否認される可能性が高いでしょう。
そのため、事業でお金が必要になった際、資金面で苦労する可能性があります。
どのような事業内容であっても初期費用などが必要ですから、準備資金を捻出できずに個人事業主としてスタートできないこともあるかもしれません。
事務所を借りるのに保証人が必要な場合がある
自己破産をすると、信用情報機関に「金融事故」としての情報が記録され、賃貸契約においてもその影響が及びます。
個人事業のために店舗等を借りる場合、保証人を立てるよう求められることも少なくありません。
しかし、自己破産者の保証人になることを了承する人・機関を見つけるのは必ずしも簡単とは言えません。
こうした状況に備え、契約に際しては信頼できる保証人を確保するか、保証人不要の物件を探すなどの対策も考えておくのが良いでしょう。
自己破産後に個人事業主として始めやすい条件
ここでは、自己破産後でも個人事業主としてスタートしやすい条件を解説します。
起業する内容をこれから決める場合は、以下のポイントを参考にすると自己破産の後でも事業を立ち上げやすいでしょう。
自宅を事務所として利用できる
開業する場合、事務所を持たなくても小規模で始められる業種がおすすめです。
自己破産後の独立・開業で大きな不安要素のひとつが事業資金の確保で、事務所が必要な場合、開設に向けてまとまった額のお金が必要になるでしょう。
毎月の家賃支払いも発生するため、かかるコストを回収できる事業でなければなりません。
軌道に乗るまでの期間、自宅を事務所として兼用できるような業種だとローリスクで事業を起こせます。
初期費用を少なくスタートできる
自己破産後に開業する場合、少ない初期費用で始められる業種を選びましょう。
自己破産の後はしばらくは融資を受けられず、原則としてクレジットカードも使えません。
そのため、多額の初期費用がかかるような事業への着手は慎重になるべきです。
パソコン一台あれば自宅でできる仕事のように、初期費用が少ない業種のほうが自己破産後の個人事業主としては向いています。
在庫商品や高額な設備・道具が必要ない
在庫を抱える必要がある業種や高額な設備が必要な事業は、自己破産後すぐの方には向いていません。
自己破産後はしばらく金融機関から借金するのが難しいため、先に仕入れが発生するようなビジネスモデルは避けましょう。
たとえば、商品を仕入れて販売する小売店の場合、売れるまでのタイムラグが発生するので、仕入れ分を回収するまでに時間がかかります。
「儲かりそう」と確信を抱いた場合でも、現状自分自身が出せる無理ない金額で始められる業種にしましょう。
自己破産後の独立を成功させるために大切なこと
自己破産をした履歴があっても起業して事業が軌道に乗れば、会社員よりもまとまった収入を得られ、金銭的な成功を収められる可能性はあります。
そこで、自己破産後の独立・開業を成功に導く3つのポイントを紹介します。
ブラックリスト登録が消えてから動く
今すぐ個人事業主になる必要がないのであれば、信用情報機関に載っている金融事故の情報(ブラックリスト)が消えてからの行動がおすすめです。
信用情報機関に事故情報が載った状態だと物件を借りることさえ難しく、クレジットカードもつくれないことも多いです。
事業を進めていくうえで大きな課題となるため、クリアにしてから独立を検討したほうがよいでしょう。
自己破産の場合、ブラックリストから削除されるまで5〜7年ほどかかります。
削除されるまでは会社員などで働き、削除されたタイミングで個人事業主になることもご検討ください。
自己破産後まずは資金を貯める
独立・開業する際はある程度の自己資金を貯めておきましょう。
仕事が入らず収入がない時期の生活や事業運営に必要な経費の支払いのため、余剰資金の準備は大切です。
破産した後、すぐに十分な貯金額に達するのは難しいかもしれませんが、まずは会社員として働いたり、アルバイトをしたりして必要な資金の準備をしましょう。
個人事業主1本に絞るのではなく、アルバイトをしながら事業をはじめるのも良いでしょう。
余裕を持って事業をスタートさせられれば、焦らずに事業に取り組めるはずです。
再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)に申し込む
日本政策金融公庫の「再挑戦支援資金(再チャレンジ支援融資)」という、過去に事業に失敗してしまった方が対象となる融資制度があります。
この制度であれば、自己破産や借金などによる廃業歴がある方でも融資を受けられる可能性があるので、この制度を利用して資金を用意することができるかもしれません。
再挑戦支援資金は、新たに開業する方または開業後おおむね7年以内の方で、次のすべてに該当する方が申し込み可能です。
- 廃業歴等を有する個人または廃業歴などを有する経営者が営む法人であること
- 廃業時の負債が新たな事業に影響を与えない程度に整理される見込みなどであること
- 廃業の理由・事情がやむを得ないものなどであること
先に案件を確保したうえで独立する
独立後に仕事がなくならないように、あらかじめ案件を確保してから起業がおすすめです。
開業手続きを済ませてから案件を探すと、収入が得られるまでの間に生活費がかさんでしまうおそれがあります。
エンジニア・マーケターなど特に当てはまるため、先に案件を獲得できる業種であれば、収入を確保したうえで独立すべきです。
また、仕事をくれる元請やクライアントとの繋がりが薄い場合も、安定的な利益を確保が難しいでしょう。
どのような業種であっても、個人事業主として成功するためには、技術力のほかに営業力やコミュニケーション能力も求められるものです。
仕事が確保できるイメージを持てないようであれば、独立ではなく会社員として働くほうが生活が安定する可能性が高いといえます。
なお、以上のお話は、破産の手続が終わった後を想定したものです。破産の手続が終わる前の起業準備にはリスクもありますのでご注意ください。
個人事業主・会社員、それぞれにメリット・デメリットはあるので、よく検討したうえで進む道を決めましょう。
2回目の自己破産は難しいので慎重に独立を考えるべき
2回目の自己破産を申し立てる際は、1回目の手続き(免責確定)から7年を経過している必要があります。
つまり、自己破産後に個人事業主として仕事をはじめて、その仕事が上手くいかずにまた借金を作ってしまっても、1回目の自己破産から7年が経過していなければ、2回目の自己破産は難しいというわけです。
やむを得ない事情がある場合に限り、7年以内でも再び自己破産できるケースもありますが、いずれにせよ簡単な手続きではありません。
それのみならず、7年を経過していれば問題なく免責されるわけでもありません。
その経過期間や借金の原因にもよりますが、1回目の破産に比べて格段に審査が厳しくなることも十分あり得ます。
個人事業主として独立を考えている方は事業を失敗しないように綿密な事業計画を練り、負債がでないように営業する必要があります。
まとめ
自己破産を経験した人であっても、独立や開業へのチャレンジは可能です。
スキルや得意分野がある場合、会社員ではなく個人事業主という働き方のほうがより高い収入を得られる可能性もあるでしょう。
しかし、信用情報機関に金融事故の情報が載っている間は、借り入れに制限が付きます。
開業にあたっての初期費用やランニングコストは必要なため、貯蓄がまったくない状態でのスタートは難しいでしょう。
自己破産後に新しい人生設計をする際は、これまで以上に慎重な判断が求められます。失敗を繰り返さないように現実的な計画を立てることを強くおすすめいたします。