
債務整理のご相談をお受けしている中で、「自己破産をしても将来家を買うことはできますか?」という質問をいただくことがあります。
将来、マイホームを買うことが目標の方にとっては、今、自己破産をして家を買うことができなくなるのは大きな問題です。
この記事では、自己破産をした後に家を買うことができるのかなど、自己破産後の住宅の購入について弁護士が解説していきます。
住宅ローンの契約後に自己破産をするケースについても状況別に紹介しているので、住宅購入を予定している方はぜひ参考にしてみてください。
監修
弁護士法人サンク総合法律事務所
弁護士 堀川 民人
自己破産をしても将来的に家を買える可能性はある
自己破産をすると、信用情報機関のブラックリストに登録されます。これにより、自己破産後は一定期間、お金を借りることやローンを組むことが難しくなります。
そのため、ブラックリストに登録されている間は、自己破産をした方の名義でローンを組み、家を購入することはできないでしょう。
ただし、ブラックリストは自己破産後、永遠に登録されているわけではなく、将来的に削除され、その後はお金を借りることや、ローンを組むことが可能となります。
つまり、ブラックリストから削除された後であれば、自己破産経験者でも家を買うことができる可能性はあります。
ブラックリストは5〜7年
ブラックリストに登録される期間は、約5〜7年です。
いつから起算して5~7年なのかは単純ではありませんが、概ね、破産手続の開始が決定された日や、免責により契約が終了した日などが起算となります。
信用情報機関にはCIC(株式会社シー・アイ・シー)、JICC(株式会社日本信用情報機構)、KSC(全国銀行個人信用情報センター)があり、機関によってブラックリストの長さは以下のように異なります。
| 信用情報機関 | ブラックリストの期間 |
| CIC | 約5年 |
| JICC | 約5年 |
| KSC | 約7年 |
自己破産後、この期間が経過したら家を買うことができる可能性があるというわけです。
自己破産後でも住宅ローンの審査に通りやすくする方法
ブラックリストから削除された後であれば、自己破産経験者も家を買える可能性がありますが、必ずローンを組めるとは限りません。
そのため、以下のような対策を行い、ローンの審査をクリアする確率を高めることが、自己破産後に家を買うために必要となってきます。
- クレジットヒストリーをつくり返済能力をアピールする
- 自己破産時に利用していない金融機関で審査を申し込む
- 審査に通りやすい住宅ローンを選ぶ
- 頭金を増やして借りる金額を減らす
- ローン審査に通らなかった場合は時間をおいて申し込む
それぞれの方法について詳しく解説します。
クレジットヒストリーをつくり返済能力をアピールする
自己破産後は借入・返済実績がまったくない「ホワイト」が生まれます。
ホワイトとは、返済実績がないため経済的な信用力もなく、借り入れが難しい状態です。
また、自己破産からかなりの期間が過ぎた後であっても、ホワイトが原因で金融機関に過去に自己破産した経験があるのかと疑われる可能性があります。
そこで、ブラックリストから削除された後に信用力を付けることで、返済能力をアピールするのも1つの手ではあります。
たとえば、クレジットカードを1つ作り、そのカードを使って買い物などをし、きちんと支払いをしていけば、クレジットヒストリーを高めることができ、返済能力の証明に繋げられます。
ただし、クレジットカードを使うなどして債務を増やすことには、当然、リスクもあります。余裕をもって返済できなくなると、住宅ローンを組むどころか、日常生活に支障が出ます。
再度の破産等をしようとしても上手くいかないことも多いです。破産をしておきながら再び信用を得ようとすること自体、倫理に反するという見方もあり得ます。
そして、住宅ローン以外の返済に手いっぱいであると判断されれば、住宅ローンの審査も厳しくなるという本末転倒の可能性も否定できません。
本記事は、住宅ローンも含め、必ずしも債務を負うことを推奨するものではありませんので、ローンやクレジット等を利用される場合には、ご自身でもよくご検討ください。
自己破産時に利用していない金融機関で審査を申し込む
信用情報機関に登録されたブラックリストは将来的に削除されますが、それとは別に自己破産をした金融機関の社内で管理するブラックリストにも登録されている可能性があります(社内ブラックと言います)。
社内ブラックは、一度登録されてしまうとずっと消えないことが多く、社内ブラックに登録された金融機関からは、この先ずっと借入等ができない可能性がとても高いです。
その意味では、自己破産後に家を購入する際は、自己破産をしていない金融機関で住宅ローンを申し込むと審査が通りやすくなる、と言えます。
なお、社内ブラックは自己破産をした金融機関のグループ会社にも影響する可能性がありますのでご注意ください。
頭金を増やして借りる金額を減らす
住宅ローンの審査において金融機関は、債務の返済能力・職業の種類・完済時の年齢・事故情報の有無といった情報から総合的な判断を行います。
頭金を増やせば借入金の総額が減るだけでなく、完済時の年齢も下がるため審査のハードルが下がるのです。
ブラックリストから削除される前から、新たに住宅ローンが組めるようになる未来に備えて、コツコツと貯金をするなど備えておくようにしましょう。
審査に通りやすい住宅ローンを選ぶ
住宅ローンの審査に通りやすくしたいのであれば、審査が比較的やさしいとされる非銀行系の住宅ローンを選ぶのが良いかもしれません。
非銀行系の住宅ローンには、審査の通りやすさの他にも、審査に要する期間が比較的短く、新しく口座を開設する必要がないといったメリットがあります。
ただし、非銀行系の住宅ローンは金融機関の住宅ローンよりも金利が高い傾向にあるのがデメリットです。
負担する総額が大きくなるため、ローンを組む際には注意しましょう。
もちろん、銀行系にせよ、非銀行系にせよ、住宅ローンを組む前には、契約内容をよく確認し、今後返済をしていけるかをよく検討しましょう。
ローン審査に通らなかった場合は時間をおいて申し込む
信用情報機関の事故情報が消えても、審査に通らない場合、すぐに別の住宅ローンを申し込まないほうが良いでしょう。
その理由の一つは、ローンやクレジットの申込みに関する記録や、金融機関による照会に関する記録が、信用情報に6か月間残るからです。
別の住宅ローンを申し込んだ金融機関がこれらの記録を見れば、以前にも住宅ローンの審査に落ちた事実を察知するでしょう。
すると、審査も厳格になり、この別の住宅ローンも審査が通らない可能性があります。他社の住宅ローンへの申込みをするなら、6ヶ月以上間隔を開けたほうが安全です。
自己破産後に住宅ローンの審査が通らない場合に家を買う方法
どうしてもローンの審査に通らない場合、別の方法で家を購入することを検討しても良いかもしれません。
自己破産経験者がローンを組まずに家を買うことができる方法を2つ紹介します。
パートナーなど破産者以外の名義で購入する
自己破産をした本人ではなく、家族名義で家を購入する方法です。
たとえば、パートナーが住宅ローンを組む際、原則として家族に自己破産経験者がいるか確認されることはなく、自己破産の影響を受けることなく審査を受けることができます。
また、実際に行うには障壁が高いですが、親名義による契約も可能です。
ただし、親名義による契約は完済時の年齢が高く、将来的に収入が年金だけになる可能性があるといった理由から、審査に受かる可能性はパートナーよりも低いといえます。
審査に通った場合でも、高い金利での契約となるケースがほとんどです。
ローンを組まずに購入する
あまり現実的な方法ではありませんが、住宅ローンを組まずに現金で購入できるのであれば、自己破産後にも問題なく家を買うことはできます。
物件の値段が極端に安い場合や、自己破産後にまとまったお金を得た場合であれば現金一括で購入できるかもしれませんし、売主が同意するなら分割支払で購入することも可能です。
家を買うために現金をコツコツ貯めることは、住宅ローンの審査の際にプラスになる可能性がありますので、現金一括で購入できなくても家のためにお金を貯めるのは良いでしょう。
家を買ったあとに自己破産するとどうなるのか|状況別に解説
ここまで、自己破産をした人が住宅ローンを組む場合について解説してきましたが、反対に、住宅ローンを組んだ人が自己破産をするとどうなるのでしょうか。
- 住宅ローンを完済している場合
- 住宅ローンを返済中で連帯保証人や連帯債務者がいない場合
- 住宅ローンを返済中で連帯保証人や連帯債務者がいる場合
ケース別で解説します。
住宅ローンを完済している場合
不動産を所有する人が破産をすると、通常、管財人がその不動産を売ります。競売により売られることもあり得ますが、任意売却によることも多いです。
売買代金は債権者に分配され、債務の返済に充てられます。
上記不動産が自宅等であると、いずれ退去することになります。
上記売買代金から引っ越し費用をねん出できる可能性もありますが、確実ではないので、破産の申立前から退去の計画を考えておく必要があります。
住宅ローンを返済中で連帯保証人や連帯債務者がいない場合
住宅ローンは通常は土地と建物を担保とするため、住宅ローンの返済の途中で連帯保証人や連帯債務者がいない方が自己破産をすると、金融機関は抵当権を行使して土地・建物を差し押え、他者に売り、代金から優先的に債権を回収しようとします(上記の管財人による換価処分を妨げることはできません)。
この場合も、その住宅を退去することになります。
担保の売却金を充てても住宅ローンが完済できない場合、住宅ローンは裁判所による免責許可により返済すべき義務がなくなります。
住宅ローンを返済中で連帯保証人や連帯債務者がいる場合
住宅ローンを返済中で連帯保証人・連帯債務者がいる方が自己破産を行うと、債権者は保証人・連帯保証人に債務の返済を求めることもできます。
たとえば、夫の住宅ローンを妻が連帯保証しているケースであれば、夫が自己破産をすると債権者は妻にローンの返済を要求することができます。
このような連帯保証人への請求は、破産手続が開始する前であっても、例えば主たる債務者が弁済を怠ったり、破産をする旨の弁護士による受任通知が債権者に届いた場合などにも、可能です。
つまり、このケースでは自己破産をすることで連帯保証人・連帯債務者に多大な迷惑をかけてしまう恐れがあります。
一括請求された連帯保証人が支払いできない場合は、連帯保証人も自己破産などの債務整理を検討せざるを得ないでしょう。
他方で、連帯保証人等が返済をした場合には、場合によっては、この連帯保証人等が住宅ローン債権者に代わって破産手続に参加することになります。
なお、連帯保証人等が付いているからといって、上記の管財人による換価処分や、住宅ローン債権者による抵当権実行による換価がなされなくなるわけではありませんので、連帯保証人等に迷惑をかける代わりに不動産を残せるようになるわけでは必ずしもありません。
まとめ
「自己破産をしたから、今後家を買うことができないのでは」という不安を持つ方は少なくありませんが、自己破産をしてもブラックリストから削除された後であれば家を買える可能性があります。
このように、自己破産をするとさまざまなデメリットが生じますが、一生涯デメリットが続くわけではないことも多いです。
もし、現在自己破産を検討していて、将来のことで不安があるなら、自己破産を進める前に弁護士にご相談ください。
弁護士であれば、自己破産に関するあらゆる相談、質問に対応可能です。不安を払拭したうえで自己破産を行い、人生の再スタートを切りましょう。