家族や親族などからお金の援助を受けていても、自己破産できるのでしょうか?
結論からお伝えすると、金銭的援助を受けている場合でも自己破産は可能です。ただし、ときには自己破産できないケースもあり、自己破産できるケースにもいくつか注意点があります。
今回は家族や知人などから援助を受けていても自己破産できるのか、援助のパターン別に解説します。
自己破産を検討している方はぜひ参考にしてみてください。
- 援助のお金で借金の返済ができる場合は自己破産は難しい
- 借金の返済はできるものの、生活はかなり苦しくなることが予想される場合は任意整理を検討
- 援助を踏まえても、「支払不能」の状態であれば、自己破産を検討
監修
弁護士法人サンク総合法律事務所
弁護士 淺海 菜保子
自己破産の直前まで、定期的に援助を受けていた場合
自己破産前に定期的に生活費などの援助を受けていた場合に、どういった問題が生じるかみてみましょう。
基本的に自己破産は可能
1か月に1回など、定期的に生活費の援助を受けていた場合でも基本的に自己破産はできます。手続き上で特に問題は発生しません。
支払不能の要件を満たさなくなるおそれがある
ただし生活費の支援額やアルバイトなどの収入状況によっては、自己破産の「支払不能」の要件を満たさなくなるおそれがあります。
自己破産の手続きを進めるためには、破産者が「支払不能」とされる状態であることが必要です。
支払不能とは「債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態」をいいます。
具体的には、収入と支出の状況を考慮すると、今後、債務(借金)の返済が不可能といえるような状態を指します。
そのため、アルバイト代や援助金を利用することで借金の返済が可能になる場合や、任意整理でも借金の問題を解決できそうな場合などは、「支払不能」の要件を満たさず自己破産が認められないケースもあるのです。
こういった場合には、任意整理も1つの有効な対処方法となるでしょう。
しかし、援助を受けていても、任意整理の和解後、和解の内容に従って、3年~5年間、返済を継続するのは、決して簡単ではありません。
支払いが途中で滞ってしまえば、結局は自己破産しなければならなくなるケースもあります。
任意整理の和解をしたとしても、その後、返済を実際に継続できるか否かが定かではない場合には、はじめから自己破産を検討した方が良いようなケースも考えられます。
具体的にどのような対処方法が適しているかは、それぞれの状況によって異なります。迷ったら、弁護士などの専門家に相談してみることをおすすめします。
家族や知人からお金を借りていた場合
支援の方法には「贈与」と「貸付」の2種類があります。
家族や知人などから「貸付」によって支援を受けていた場合、自己破産をすると援助者に迷惑をかけるおそれがあります。自己破産はすべての債権者を対象にしなければ行えないためです。
援助してくれた人も貸付人である以上は「債権者」となり、自己破産の手続きに巻き込まれることとなります。
貸付人である家族や知人は、「債権調査票」などの書類の届出を催促されますし、「免責決定」が債務者におりると、債務者は借金の返済をする義務が無くなります。
すると、貸付人の立場からすると、自分が債務者に貸していたお金も、返してもらえなくなってしまうでしょう。
貸付人によっては気分を害し、債務者と貸付人の関係が壊れてしまう場合も考えられます。
また本人同士が貸付けの意図をもっていなくても、裁判所から「借入れではないか。援助者を債権者としてあげるべきではないか?」と追及されるケースもよくあります。
そのため、実際に、貸付けではなく、援助を受けている場合には、自己破産の手続きを進める前に、「援助」と証明するために「贈与契約書」などの書類を作成しておくと安心でしょう。
自己破産の申立てをする直前に大きなお金を援助してもらった場合
借金返済に困っていると、親族や知人などから大きなお金を出してもらい、返済や生活費に充てようとする方もおられます。
破産の申立てをする直前のタイミングで大きなお金を援助してもらっても、自己破産できるのでしょうか?
以下で状況別にみていきましょう。
借金を返せる場合
自己破産の手続きを進めるためには、「支払不能」とされる状態であることが必要です。
援助してもらったお金で借金の全額やほとんどを返済できるなら、「支払不能」の要件を満たさず自己破産の手続きを進められなくなる可能性があります。
仮に、援助金で借金のほとんどを返済できても、残った借金の支払いで、生活そのものが厳しくなることが予想されるような場合には、任意整理を検討するのがよいでしょう。
借金を返せない場合
援助金だけでは借金を返済しきれない場合、現段階の生活状況において支払不能であれば自己破産を申し立てることができます。
ただし、大きな額を援助してもらった後に自己破産をする場合は、以下のような注意点があります。
援助金をもらった後に自己破産をするときの注意点
・一部の債権者だけへの返済はしない(偏頗弁済)
自己破産の申立てをする直前や、自己破産の手続きを進めている中で、援助してもらった大きな額を一部の債権者への返済に充てると、「偏頗弁済」とみなされ免責が認められなくなるおそれがあるのです。
一部の債権者だけに借金が返済されることは、他の債権者にとって不公平だという理由です。
もし、自己破産の手続きを行う前に、一部の債権者のみにある程度の額を返済してしまったという場合は、弁護士などの専門家に相談しましょう。
・浪費はしない
まとまったお金が入ってくると、ついつい気が大きくなって浪費してしまう方がおられますが、自己破産の申立て前や、自己破産の手続きを進める中で浪費をすると、やはり免責が認められないおそれがあります。
自己破産の手続きを進める中では、家計簿や通帳などを提出する必要があります。その中で、たとえば「収入に見合わないような高価な買い物を頻繁にしている」「毎月の使途不明金が多すぎる」などの場合は浪費とみなされる可能性が高いでしょう。
・援助されたお金を持ったまま破産すると、没収されてしまうリスクがある
自己破産とは、簡単に言えば、借金がゼロになる代わりに、自身の一定額以上の資産を失う、という手続きです。
「一定額」とは、具体的には、現金なら99万円、預貯金などの個別資産なら20万円がおおよその目安となっています(もっとも、細かいルールは各裁判所によって異なります)。
そのため、せっかく援助を受けても、その援助金を持ったまま破産の手続きを進めた場合には、裁判所に没収されて、債権者にそのお金が配当される可能性があります。
それでは、援助してもらったお金はどのように使うのがベストなのでしょうか?
【援助金の使い道】
援助金の使い道でおすすめなのは、自己破産費用に充てる方法です。 自己破産をするときには、主に以下のような費用がかかります。
| 印紙代 | 破産を申し立てる際に裁判所へ納める収入印紙の費用 |
| 郵便切手代 | 債権者などへ連絡するための郵便切手代 |
| 官報公告費用 | 自己破産について官報公告する費用(破産申立時に裁判所へ納めなければならない) |
| 管財予納金 | 管財事件になる場合に発生する費用 |
| 弁護士費用 | 自己破産を弁護士に依頼すると発生する費用 |
援助金を弁護士費用に充てる場合の注意点
援助してくれた人は、「債務者本人が自己破産をする」と認識していないケースが少なくありません。
もしも親戚や知人の方が本人の生活費や借金返済のために援助したのであれば、自己破産の弁護士費用に使われたことを後から知って気分を害し、トラブルになってしまうおそれがあります。
また、援助金を破産申立費用に使った場合、援助した親戚や知人の方に対し、裁判所から「お金が破産申立に使われることを援助者が知っていたかどうか」「援助ではなく借入れではないのか」などと確認されるケースがあります。
それらの状況に備えるためにも、援助者に許可を取ってから、援助してもらったお金を破産の費用に充てるのが最善といえるでしょう。
自己破産後も援助を受けながら生活できる?
たとえば、毎月家族や親族から支援を受けて生活してきた場合、自己破産をしても援助を受けながらの生活を継続できるのでしょうか?
基本的には「できる」と考えましょう。
自己破産したからといって援助が禁止されるわけではありません。
また、「破産手続開始決定後」に入金されたお金については、基本的に、すべて破産者のものとなります。そのため、債権者へ配当される心配も不要です。
ただ、家族や知人がいつまで援助してくれるかはわかりません。援助者の事情や、関係の悪化などにより援助を打ち切られるおそれもあります。
生活をするために、将来的にも援助が必要な場合は、生活保護を検討してみましょう。
生活保護とは、国民に最低限度の生活保障をするために行政が生活費を支援してくれる制度です。生活保護を受けることができれば、親族からの援助がなくとも自活できるようになります。
闇金に要注意
自己破産後はクレジットカードや各種ローンの利用が基本的にできません。信用情報に、自己破産をした旨が事故情報として登録され、いわゆる「ブラックリスト状態」になるからです。
そんなときに注意しなければならないのは闇金です。
闇金は金融庁などに登録をせず、違法な貸付け(高すぎる金利や行き過ぎた取立て行為など)を行う貸金業者です。
自己破産をすると、その情報が掲載される官報という機関紙があります。一般の方はまず見ないのですが、闇金業者が官報をチェックして、破産した方に直接連絡をするケースがよくあります。
連絡を無視していれば問題はないのですが、生活が苦しく、ブラックリスト状態のため、一般的な金融機関から融資を受けられない場合に、闇金から借入れしてしまう方も少なくありません。
自己破産は生活を立て直すための手続きです。免責がおりてからも毎月家計簿をつけるなどして、借入に頼らない生活を目指しましょう。
それでも、どうしても生活が苦しくなってしまった場合には、公的融資制度(国や自治体からの借入れ)や、先述した生活保護について検討しましょう。くれぐれも、闇金に「ついつい手を出して」しまわないように注意してください。
ベストな解決方法は弁護士に相談を
借金を抱えているときのベストな解決方法は、その方の置かれた状況によって大きく異なります。
たとえば同じように親族から支援を受けている状態でも、任意整理が適切な場合もあれば自己破産が適切な場合もあります。
素人判断では、自分にとっては何が最善な解決方法なのか、正しい答えを導き出すことが難しいでしょう。
債務整理や借金トラブルに詳しい専門家であれば、相談者の個別状況に応じて最善の対処方法をアドバイスしてくれます。
自己破産や任意整理などの手続きを依頼すれば借金問題を根本的に解決でき、状況改善が見込めます。
借金返済にお悩みの方や、自己破産を検討しているが、お金を援助してもらっており破産できるか不安な方は、まずは勇気を出して、弁護士などの専門家に相談してみましょう。