給料差押えのピンチを脱却する方法!差し押さえられる流れと対処法

借金の滞納や返済に苦しんでいる人にとって「もし給料が差し押さえられたらどうしよう?」という不安はつきものです。

差し押さえの経験がない場合、給料が差し押さえられるとはどのような状態なのか、どの程度の範囲が対象となるのかなども気になるところでしょう。

本記事では給料差押えの流れや影響、給料を差し押さえられた場合の対処法などを解説しています。

この記事の要約
  • 給料差押えでは、基本的には給料の手取りが44万円以下の場合はその4分の1、手取りが44万円以上の場合は手取りの全額から33万円を差し引いた残額が差し押さえられる
  • 給料が差し押さえられるまでには、債権者からの再三にわたる督促や一括請求などがあり、その後「訴状」または「支払督促」という書類が特別送達で送られてくる。それも無視していると、差押えが実行される
  • 給料の差押えは、原則として債権の回収が完了するまで続く
  • 給料差押えへの対処法として、主に一括返済と債務整理があげられる

監修

弁護士法人サンク総合法律事務所
弁護士 今枝 利光

弁護士法人サンク総合法律事務所 今枝 利光

給料差押えとは

差押えとは、裁判所が債権者(お金の貸主)の申立てに基づき、債務者(お金の借主)の財産の事実上・法律上の自由な利用を禁止する行為のことです。

借金や税金、保険料などの支払いを怠っている債務者に対し、金融機関や国などの債権者がその支払い金の徴収のために行われます。

差押えが可能な財産は動産や不動産、債権(例:勤務先に対する給料債権や銀行に対する預金債権)です。

借金滞納によって債権者に給料を差し押さえられると、債務者は給料の全額を自由に使ったり、手元に置いておいたりすることができなくなります。

債務者が働いていれば、給料は安定して入ってくるため、借金を滞納されている債権者にとって、給料差押えのメリットは大きいのです。

とはいえ、給料差押えはいつでも誰でも簡単に行えるものではありません。差押えをするには、裁判所へ申立てを行って『債務名義』を取得することが必要となります。

借金を滞納した場合の給料差押えの仕組み・流れ

給料差押えはどのような仕組み・流れで行われるのでしょうか?

まず、借金を滞納すると、債権者から電話や郵便によって返済を催促されます。

これを無視し続けていると『催告書』が送られてきて残債を一括請求されます。債務者がこれにも応じずさらに放置していると、強制執行(差押え実行)のための裁判を起こされることとなるのです。

給料差押えの際の債権者の動きは大まかに以下のようになります。

1. 債務名義を取得する

給料差押えをするにあたって、債権者はまず『債務名義』を取得する必要があります。

債務名義とは、債権者が裁判所へ債務についての申立てを行った際に発行される文書のことです。債務名義には、支払い督促や確定判決、和解調書といった種類があります。

給料差押えを裁判所へ申し立てる際には、その前段階で債務名義を取得していることが前提となるのです。

つまり、給料差押えの申立ては「債務者から借金の支払いが滞っている」ということが公的に証明された状態で、はじめて行うことができるものであるともいえるでしょう。

債権者は、債務名義を取得するために、裁判を起こす必要があるため、その際、債務者に対しては裁判所から『訴状』または『支払督促』という書類が特別送達で送られてきます。

なお、債務名義を取得する前の段階で、債権者が『給料仮差押え』を行う場合もあります。

仮差押えの段階では、債権者は給料を回収することはできません。しかし、仮差押えを受けた会社は債務者へ給料の全額を渡すことができなくなってしまいます。

この際、債務者に対しては裁判所から『訴状』または『支払督促』という書類が特別送達で送られてきます。

2. 裁判所へ差押えの申立てを行う

債務者が『訴状』や『支払督促』の書類も放置した場合、差押えが実行されることになります。たとえば、支払督促が届いた場合には、2週間以内に異議申立てを行わなければ、そのまま債務の内容が確定してしまいます。

これにより、債権者は債務名義を取得することができます。

債務名義を取得した債権者は、給料差押えのための申立てを裁判所へ行うことが可能となります。

3. 差押えの実行、債権者の勤務先へ通知が送られる

支払督促や判決が確定すると、債権者は強制執行の申立てができるようになり、債務者が勤務している会社などに対して、給料の差押えに関する通達が送られます。

なお、差押えの通知を受けた債務者の勤務先は『第三債務者』と呼ばれます。

4. 差し押さえた給料の回収・取立て完了

第三債務者へ給料差押えの通知を送ってから1週間が経過すると、債権者は差し押さえた給料を第三債務者から債権として回収可能となります。

債権者が複数いる場合には、差し押さえた給料を回収して分配することとなるでしょう。第三債務者は、差し押さえられた債務者の給料を『供託金』として提出し、裁判所の判断によって回収、分配が進みます。

給料の差押えは、原則として債権の回収が完了するまで続きます。債権者は申し立てた借金の額に加え、申立てにかかった費用なども上乗せして回収することが可能です。

回収が完了したら、債権者が裁判所へ『取立完了届』を提出し、差押えは完了します。

給料差押えされると会社に借金がバレる?生活への影響

給料が差し押さえられてしまった場合、以下のような生活への影響が考えられます。

収入が減り生活ができなくなってしまう

給与差押えの金額の範囲(後ほど解説します)は決まっているとはいえ、給料の手取り全額でぎりぎりの暮らしをしているような場合には、たちまち生活が困窮してしまうでしょう。

差押えを行った債権者以外にも借金返済をしている場合には、なおさら生活は厳しくなると予想されます。

職場に借金滞納の事実が分かってしまう

差押えが行われると生活が苦しくなってしまうだけでなく、差押えの手続きは勤務先に対して行われるため、借金を滞納している事実が職場にバレてしまいます。

給与差押えを理由に会社が従業員を解雇することはできないため、クビになることはないものの、少なからず職場に居づらくなるでしょう。

全額が差し押さえられるの?給料差押えの範囲

給料が差し押さえられた場合でも、全額が差し押さえられることはなく、生活するのに必要と思われる最低限の金額は守られます。

基本的には、

  • 給料の手取りが44万円以下の場合はその4分の1
  • 手取りが44万円以上の場合は手取り全額から33万円を差し引いた残額

が差し押さえられることとなります。手取りから33万円差し引いた額と手取りの4分の1の額を比べて、金額が高い方が選択されます。

【口座差押え】口座内の金額が全額差し押さえられることもある!

差押えの対象はいくつもあり、何を差し押さえるかは債権者が選ぶことができます。

もし債権者が『口座差押え』を申し立て、対象となる口座が給料振込先に指定されていた場合、口座内に入っている預貯金の全額が差押えの範囲となってしまうおそれもあるのです。

口座を開設している銀行や信用金庫は、差押えを受けた預貯金について、債権者へ直接支払いを行います。

税金や養育費の滞納による給料差押えの範囲

税金を滞納したことにより給料差押えが行われる場合の差押え禁止の範囲の算出方法は、借金などの滞納とは異なり、国税徴収法や地方税法などによって算出されます。所得の高い人ほど差し押さえられる範囲が大きいといえます。

養育費の未払いによる給料差押えの範囲は、給料から税金などを控除した残額の2分の1(手取りが66万円を超える場合は33万円)までです(民事執行法第152条3項)。

調停や裁判で離婚をした場合や、離婚時に公正証書を作成した場合、養育費の支払いを怠るとすぐに給料を差し押さえられるおそれがあるので注意しましょう。

給与差押えに対して会社が拒否することはない

債務者の給料が差押えになったら、裁判所は債務者の勤め先である会社に通達を行います。そして会社は差押え額を債権者に支払い、残った額を債務者に給料として支払います。

「勤務している会社に相談して債権者への支払いを拒否してもらい、自分に給料を全額支払ってもらえばいいのではないか」と考える債務者の方もいます。

しかし会社が給料差押えを拒否すると大きなデメリットが発生します。

債権者が強制執行の申立てをすると、会社は『第三債務者』という立場になります。

そのため、差押えに従わず債務者に全額の給料を支払ってしまうと、会社自体に返済義務が発生してしまうのです。

その会社自体が債務者になってしまうというデメリットがあるので、給料差押えに対して会社が拒否するということは考えづらいでしょう。

アルバイト・パート・派遣社員の場合も給料は差し押さえられる?

給料の差押えが行われるのは、正社員の給料だけとは限りません。

アルバイトやパート、派遣社員など雇用形態にかかわらず、給料を差し押さえられてしまいます。

また、差押えは支払い方法に影響されることもありません。たとえ給料が現金による手渡しであっても、勤務先が給料を支払う前の段階で差し押さえられます。

給与差押えは、基本的には滞納分がなくなるまで続く

給料差押えは、基本的には借金の滞納分がゼロになるまで毎月続きます。

一刻も早く給料差押えを解除したい場合は、滞納分の残額を一括で債権者に支払うか、債務整理を検討しましょう。

給料差押えへの対処法は次で詳しく解説します。

退職して「勤務先不明」状態にすれば給料を差し押えられない?

現在勤めている会社の給料を差し押さえられている場合、会社を退職したら差押えは効力を失います。

別の会社に転職した場合、そちらの給料は差押え対象になりません。債権者に転職先を伝えない限り、新しい職場からの給料を差押える手続きをとってくる可能性も低いでしょう。

ただし、差押えの対象となるのは給料だけではありません。

今度は口座や不動産などの差押えがいつ行われるかわからない状態になりますし(給料差押えと口座差押えを同時にすることも手続き上可能です)、現在の勤務先から退職金が出る場合は、その4分の1も差押えの対象となります。

退職・転職は一時的に給料差押えを逃れるその場しのぎの方法ともいえるでしょう。

借金の滞納を解消する根本的な解決方法を模索すべきです。

給料差押えへの対処法

給料の差押えに対しては、以下のような対処法を取っていくこととなります。

一括返済

給料の差押えは、借金や利息などの債権がなくなれば終了します。差押えが行われる前の段階で、借金の残額について一括で支払うように督促されているケースが大半です。

そのため、現在ある借金について一括で返済できれば、差押えを解除することは可能です。しかし、一括返済ができないから差し押さえられているともいえるため、あまり現実的な解決方法ではないでしょう。

自己破産、個人再生

すでに給与差押えを実行されてしまった場合は、自己破産・個人再生の手続きを検討するのも選択肢のひとつです。

自己破産や個人再生を裁判所に申し立てたことを債権者に伝えると、債権者が差押えを任意に取り下げてくれることもあります。

債権者が差押えを取り下げてくれない場合でも、裁判所に対し自己破産や個人再生を申し立てることにより、併せて、その後の強制執行(差押え)を中止することを求めることができます。

強制執行が中止されると、職場が債権者に対して給与の一部を支払うことを止めてもらえます。

ただし、強制執行の中止が認められたとしても、債権者が差押えを任意に取り下げない限り、差押分の給料は、職場にプールされるか供託されるにとどまるため、債務者には実際に支払われません。

強制執行が取り消されて債務者の手取り収入が回復するまでには、時間が掛かります。

債権者が差押えを任意に取り下げてくれない場合に差押え自体を取り消すためには、自己破産(同時廃止事件)や個人再生の手続きの申立てとは別途手続きの申立てとは別途、手続の開始決定後に、裁判所に強制執行の取消の申し立てを行う必要がある等、手取り収入が回復するまでに時間と手間が掛かります。

ただし、自己破産(管財事件)の場合は、その手続きの開始決定後に破産管財人が強制執行の取消の手続きをしてくれるため、比較的早めに手取り収入が回復します。

弁護士に相談しなければ、どの債務整理を選択できるか、給与満額が支払われるまでにはどのくらいの時間がかかるのかなど、事前に把握するのは困難でしょう。

差し押さえられる前なら任意整理で分割してもらえる可能性がある

給料が差し押さえられる前の段階であれば、弁護士などの専門家に任意整理を依頼し、早急に対応してもらうことをおすすめします。

任意整理は、将来の利息をカットもしくは大幅減額し、長期の分割払いに変更してもらえるよう債権者に交渉する手続きです。

借金返済を滞納していても、交渉に応じてもらえる場合は多くあります。

ただし、任意整理の手続きは差押え前でなければ効果が見込みづらいです。給料の差押えが確定したにもかかわらず、債権者が差押えをとりやめて任意整理(分割払い)の交渉に応じるとは考えにくいからです。

滞納が長期にわたり、差押え実行済みまたは差押え寸前となってしまった状態で債務者本人が分割交渉をしても、多くの債権者は聞き入れないでしょう。

一括返済が見込めない場合、すみやかに弁護士などの専門家に債務整理の相談をすることをおすすめします。

まとめ

給料の差押えは、債権者が債務名義を取得することで行えるようになります。給料が差し押さえられれば会社にもバレるうえ、生活できなくなってしまうおそれもあります。

差押えを回避するために、早めに弁護士事務所などへ相談して、任意整理や自己破産、個人再生などの債務整理を検討するようにしましょう。

サンク法律事務所には債務整理案件を多く解決してきた弁護士が多数所属しているので、いまの状況や今後の生活を踏まえて「債務整理をするべきか」「どの手続きが最適か」など包括的なご提案が可能です。

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