借金があるのに妊娠してしまったら「借金を返せなくなるのではないか?」と不安になるものです。しかし妊娠中に借金しても解決する方法があるので、あきらめる必要はありません。
この記事では妊娠して借金を返せないかもしれないという不安を抱えている方へ向けて、解決方法や相談先をご紹介します。
監修
弁護士法人サンク総合法律事務所
弁護士 町田 麻美
借金返済があるのに妊娠してしまったときに最初にやること
借金を抱えた状態で妊娠してしまったら、まずは産休中や育休中に返済していけるかを考えましょう。返せそうならあまり深刻に悩む必要はありません。
以下で借金を返済しているのに妊娠してしまった場合にとるべき対応手順をお伝えします。
借金の概要をまとめる
まずは具体的にどういった借金があるのか、概要をまとめましょう。
どこからどのような借入れがあり、残金がいくらになっているのかなどの情報を整理します。
- 借入先
- 借金の残高
- 毎月の返済額
- 利率
- 完済予定時期
- 保証人の有無
上記のような情報を整理して、借入先の一覧表を作成するとよいでしょう。
出産や産後にかかる出費を調べる
次に、出産にかかる費用や産後に必要なお金について調べておきましょう。
出産や育児には、以下のようにさまざまなお金がかかります。
・妊婦健診費用
妊婦健診(妊婦健康診査)とは、無事に出産できるように、妊娠から出産するまでの間に定期的に行う妊婦のための健康診断です。厚生労働省によって14回程度受診すべきと決められています。
妊婦健診には健康保険が適用されないため全額自己負担となり、かかる病院によっても金額が異なってきます。
相場としては、基本検査の場合5,000円前後、特別な検査を受けると1〜2万円程度になるでしょう。
なお保険適用の病気や症状があらわれると、そのための治療費や検査費用は保険適用にしてもらえます。
また妊婦健診の際には、自治体の助成制度を受けられるケースが多数です。
助成制度については、ほとんどの場合通院している病院から案内がありますが、心配な方はお住まいの地域の市役所や保健福祉局などに問い合わせてみましょう。
・分娩・入院費用
出産時には分娩費用や入院費用がかかります。
分娩費用は出産そのものにかかる費用、入院費用は出産前後に入院する際にかかる費用のことです。
分娩・出産費用には「新生児管理保育料」「検査・薬剤料」「処置・手当料」なども含まれ、詳細は以下のようになります。
- 入院費
- 分娩料
- 室料差額
- 新生児管理保育料
- 検査・薬剤料
- 処置・手当料など
上記の合計でおよそ50万円程度にはなるでしょう。
ただ入院費の金額は入院先の病院によっても変わりますし、分娩費は自然分娩になるか帝王切開になるか、無痛分娩するかなどによっても変わってきます。
また出産時には国から「出産育児一時金」を支給してもらえるので、自己負担額を減らせます。
これまでは42万円でしたが、2023年4月から50万円の出産育児一時金が支給されることになりました。
分娩・入院費用のほとんど全てが出産育児一時金で補填できる計算です。
・マタニティ・ベビー用品代
子どもを出産する場合、マタニティ用品やベビー用品も必要になります。
たとえば妊娠すると体型が変わるので、マタニティウェアやショーツなどが必要となるでしょう。
出産が近くなると入院時に着る衣類も用意しなければならない上に、赤ちゃんのためのベビー用品も揃える必要があります。
主に以下のようなものを用意することになります。
- マタニティウェア、下着
- 妊娠線対策のクリーム
- 骨盤ベルト
- 母乳パッド
- 産褥ショーツ
- ベビーウェア
- おむつ
- 哺乳瓶
- 赤ちゃん用のベッド
- ベビーバス
- 抱っこひもなど
マタニティやベビー用品については、どこまでどのようなものを揃えるかで金額が大きく変わってきます。事前にどういったものを用意するのか検討して、費用の計算をしておきましょう。
入院先の病院によっては入院時に必要なものを事前に確認できるので、問い合わせてみてください。
・育児中の諸費用
赤ちゃんが生まれると親族や知人からご祝儀をもらうことがあるでしょう。その場合、お祝い返しをしなければなりません。また育児中にはミルク代やベビー服なども必要になってきます。
こういった費用も計算に入れておくことをおすすめします。
出産や産後に受け取れるお金や公的支援を知る
日本には出産や産後の時期に受け取れる公的支援があるので、どのような支援を受けられるのか、事前に調べておきましょう。
【出産時・産後の費用を扶助する制度】
出産時や産後の費用を扶助してくれる制度として、以下のようなものがあります。
・妊婦健診の助成
妊婦健診14回分まで、助成金を受け取れます。金額は各自治体によって異なるので、問い合わせてみましょう。
・出産育児一時金
以下の条件を満たす方は、出産育児一時金として50万円を受け取れます(2023年4月から)。
- 健康保険などの被保険者、ならびにその被扶養者、国民健康保険の被保険者
- 妊娠4か月(85日)以上で出産した
なお産科医療補償制度の対象となっていない医療機関で出産した場合と、妊娠22週に満たない出産の場合は、一時金の金額は48万8,000円になります。
・出産手当金
以下の条件を満たす方は、出産手当金として月給の3分の2程度の金額を受け取れます。
支給期間は出産日以前の42日(6週間)から出産後の56日(8週間)までです。
- 健康保険に加入している被保険者(受給するために出産前にどれくらい被保険者期間があったかは問われません。)(国民健康保険にはこの制度はありませんので、受給することはできません。)
- 出産のため会社を休んで雇用者から給料が支払われない、あるいは支給額が出産手当金より少ない場合
出産手当金は、出産のために会社を休んで給与を受け取れなくなった場合に健康保険から支給されるお金です。
支給対象となるのは、出産日以前42日から出産の翌日以降56日までの間に会社を休んだ方です。
・育児休業給付金
以下の条件を満たす方の場合、ハローワークに申請することで育児休業手当金を受け取れます。
- 雇用保険に加入していて育児休業開始日前の2年間のうち、1か月に11日以上働いた月が12か月以上ある
- 育児休業中、事業主から「育児休業開始前6ヵ月における1カ月あたりの賃金」の8割以上の報酬を受け取っていない
- 就業日数が対象期間中の月に10日以下(10日を超える場合は80時間以下)
育児休業給付金として受け取れる金額は、以下のとおりです。
- 育児休暇開始から180日目まで…育児休業開始時の賃金日額×支給日数の67%
- 育児休業開始から181日目以降…育児休業開始時の賃金日額×支給日数の50%
育休中は仕事ができなくなって無給になることがほとんどなので、国から給付金を支給してもらえます。
・乳幼児医療費助成制度
乳幼児医療費助成制度は、自治体が乳幼児の入通院にかかる費用を助成してくれる制度です。
金額や対象年齢は各自治体によって異なるので、詳細は自治体へ確認しましょう。
乳幼児医療費助成制度を利用するには、市区町村に申請して医療証を受け取る必要があります。
・児童手当
子どもが生まれてから中学校を卒業するまでの間は児童手当を受け取れます。
児童手当の金額は以下のとおりです。
- 0歳~3歳未満…月額15,000円
- 3歳~小学校修了前…月額10,000円(第1子・第2子)
- 月額15,000円(第3子以降)
- 中学生…月額10,000円
※ただし、所得制限・所得上限があり、所得制限を超えた場合には、中学校を卒業するまでは、特例給付として月額1人5,000円が支給されます。所得上限を超えた場合には、児童手当は支給されません。
児童手当を受給するには自治体へ申請しなければなりません。
出産したら、お住まいの市区町村に「認定請求書」を提出しましょう。認定を受けられると児童手当を受け取れるようになります。
今後子どもがいる生活でも支払っていけるか、収支計算する
借金の概要を確認し、子どもの出産前後の費用や助成金などを確認したら、子どもがいる生活の中でも借金を返済していくことが可能かどうかを計算してみましょう。
育休中は育児休業給付金を受け取れる方も多数います。その中から無理なく借金を返済していけそうなら、特に問題ないといえます。
反対に支払いをできる見込みがなかったり、かなり無理をしないと返済できなかったりする計算なら、早めの対策が必要となります。具体的な対処方法は以下で解説します。
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妊娠~育児期間に借金の返済が難しい場合の対処法
もしも妊娠から育児の期間にかけて借金を返済していけないようであれば、以下のように対応しましょう。
家族が一括返済できるならしてもらう
まずは借金を一気になくす方法を考えるべきです。
妊娠中や育児中に借金のストレスを抱えていると、体調にも悪影響を及ぼします。
妊娠中や育児中はただでさえ精神的に不安定になりやすいので、借金の悩みがない方がよいのは明らかでしょう。
できれば夫や親などの家族に頼むなどして、一括返済してもらうようおすすめします。
債務整理を検討する
もし支援してくれる家族がいない場合や家族にもお金がない場合などには、債務整理で解決しましょう。
債務整理とは、借金問題を解決するための手続きの総称です。
債務整理にはいくつかの種類があり、状況に応じた手続きを利用するとたいていの借金問題を解決できます。
債務整理の種類や概要をみてみましょう。
任意整理
任意整理とは、借入先の債権者と協議をして借金の返済条件を決め直す手続きです。
多くの場合、借金にかかる利息を全額カットもしくは大幅減額してもらえるので、返済の負担がかなり軽くなります。
任意整理をすると、借金の総返済額が減るだけではなく月々の返済額も減るケースが多数です。財産もなくならず必要書類も比較的少ないので、利用者の負担が小さい債務整理方法といえるでしょう。
個人再生
個人再生は、裁判所へ申立てをして借金返済額を大幅に減額してもらえる手続きです。
借金の減額率はもとの借金返済額の5分の1から10分の1程度になる場合も多々あります。
ローンで購入した物は引き上げになってしまいますが(車のローンなど)、それ以外の財産は保有し続けることができます(住宅ローンに関しては、住宅ローン特則を利用することが出来れば、住宅を守ることが出来ます)。
ただし借金額は100万円以下には減らないので、借金が100万円以下の方にとっては利用するメリットが小さくなります。
また個人再生を利用するには、継続的な収入が必要です。育児中に無職や無収入となってしまう場合には、個人再生の利用は厳しくなるでしょう。
自己破産
自己破産は、裁判所へ申立てをして借金などの負債の支払義務を全額免除してもらう手続きです。
高額な借金があっても基本的に全額免除してもらえるので、借金問題の解決に非常に役立つ手続きといえるでしょう。
妊娠中で仕事ができなくなって収入がなくなっても自己破産なら利用できます。
ただし自己破産をすると、一定額以上価値のある債務者名義の財産が失われます。裁判所によりますが、手元に残せるのは99万円程度の評価額の資産までです。
妊娠中に債務整理をするメリット・デメリット
妊娠中は無職になるので「債務整理できるのか?」と不安になる方もいるでしょう。結論として妊娠中や育児中であっても債務整理自体は可能です。
ただし妊娠中に債務整理をするとメリットだけではなくデメリットもあるので注意してください。以下で解説します。
妊娠中に債務整理をするメリット
・債権者からの督促がなくなる
弁護士や司法書士に債務整理を依頼すると、債権者からの督促がストップします。
貸金業法により、弁護士や司法書士が介入した後、債権者は債務者へ直接督促してはならないと規定されているからです。
妊娠中に借金の督促を受けるのは精神衛生上、悪影響となるでしょう。
ですので督促を止められるのは、債務整理の大きなメリットといえます。
・借金返済が楽になる
妊娠中に債務整理をすると、月の返済金額が下がることが多いので、支払いが楽になります。
特に自己破産が認められれば、借金を全く返済しなくてよくなります。
借金問題を根本的に解決できるのは債務整理の大きなメリットといえるでしょう。
妊娠中に債務整理をするデメリット
・クレジットカードや各種ローンの利用が難しくなる
債務整理をすると、クレジットカードや各種ローンの審査に通りづらくなります。これまで使っていたクレジットカードも止められることが多いので、不便に感じる方もいるでしょう。
ただし使えなくなるのは債務者が契約者となっているカードのみなので、家族名義のクレジットカードの家族カードを利用することは可能です。
・弁護士費用や司法書士費用がかかる
債務整理を自分で行うことは困難なので、弁護士や司法書士に依頼する方が多数です。
すると、弁護士費用や司法書士費用がかかってきます。
ただ自分で債務整理をすると不利な条件での和解になったり、失敗したりするリスクが高いので、よりよい条件で借金問題を解決できる経費と思えば、費用を払ってでも債務整理する価値があるといえるでしょう。
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妊娠中に借金やその他のことで悩んだら利用したい窓口
妊娠中には妊婦の方が利用できる相談窓口があります。
借金や子育てについて悩みがある場合には、気軽に利用してみましょう。
にんしんSOS相談窓口
主に望まない妊娠をしてしまった方を支援してくれる機関です。全国に相談窓口があるので、思いがけない妊娠をしてしまった場合などには相談してみましょう。
一般社団法人全国妊娠SOSネットワーク
自治体の保健センター
自治体の保健センターでも妊娠や出産についての相談に乗ってくれます。
産婦人科のメンタルケア
妊娠すると、精神的に不安定になりやすいものです。多くのクリニックでは妊婦向けのメンタルケアに対応しているので、気分が沈みがちな方などは相談してみましょう。
法テラス
法テラスの民事法律扶助を利用する方法もあります。
民事法律扶助とは、法テラスが弁護士費用を立替払いしてくれる制度です。立て替えてもらった金額は、無利息で毎月5,000円ずつからの少額分割償還ができます。
法テラスの費用体系が適用されるので、費用自体も直接弁護士事務所や司法書士事務所へ依頼するより安くなるケースが多数です。
民事法律扶助を利用したいときには、一度お近くの法テラスの事務所へ相談してみてください。
ただし、弁護士を選べない、時間がかかる、一定以下の収入でなければ利用できないなどの制限もあるのでご注意ください。
弁護士
借金を抱えていて債務整理が必要な場合には、弁護士へ相談しましょう。無料相談を受け付けている事務所も多いので、ぜひ一度利用してみてください。