借金や携帯電話の契約などの際に「名義貸し」が行われることがあります。名義貸しとは、借入れなどの名義のみを人に貸して、貸した方は実質的に契約に関与しないことです。
名義貸しは違法となるおそれがありリスクも高いので、やってはいけません。
この記事では名義貸しの危険性や罪の重さ、家族への名義貸しも禁止されるのか、また名義貸しによる借金の解決方法などについて解説します。
- 名義貸しは、自分の名義を他人に貸して契約上の名義人になる行為で、基本的に違法となる
- 借金での名義貸しは、家族間も含めNG。名義を借りた人が支払いを踏み倒した場合、自分に請求がきたり、ブラックリスト状態になったり、財産を差し押さえられたりするリスクがある
- 名義貸しをすると、詐欺罪などの罪に問われる
- 名義貸しした借金の請求が自分にきてしまった場合の対処法として、債権者と交渉する、名義を借りた人に請求する、債務整理をするといった方法がある
- 債務整理を検討する場合は、弁護士などの専門家に相談するのがおすすめ
監修
弁護士法人サンク総合法律事務所
弁護士 今枝 利光
名義貸しとは
名義貸しとは、さまざまな契約や法律行為を行うときに名義のみを貸して、貸した人は契約などに関与しないことをいいます。
実際にそのサービスを利用したり、借金であれば返済したりするのが名義を借りた人であっても、契約上の名義人は名義を貸した人です。
さまざまなケースで名義貸しが行われていますが、どのような場合でも基本的に名義貸しは違法です。
名義貸しが行われるのはなぜ?
名義貸しが行われる理由はさまざまです。
- 本人が名前を出したくない
- 本人がブラックリスト状態(信用情報に事故情報が登録されて借金や分割払いができない状態)になっている
- 犯罪行為に利用する口座や携帯電話番号がほしい
- リスクのある会社を経営するとき、自分名義でやりたくない
主にはブラックリスト状態の方がお金を借りるため、犯罪に利用するため、リスクのある会社を経営するためなどのケースが多いでしょう。
借金での名義貸しに注意!自分に借金が降りかかる結果に
借金での名義貸しは、知人や親族などのために、代わりに銀行や消費者金融などでキャッシングをしたりローンを組んだりしてあげる行為です。
この場合、知人や親族などはブラックリスト状態になっていたり、限度額まで借りてこれ以上借入れができない状態になっていたりと、「その人本人の名義で借入れができない」事情があるケースがほとんどです。
親しい間柄の人に頼まれると、断れずに名義貸しをしてしまう方は多いでしょう。
しかし、実際にそのお金を使っているのが誰であろうと、銀行や消費者金融などの債権者からすると契約者は名義を貸した人(自分)です。
もし、知人や親族がその借金を支払えなくなったり、踏み倒して逃げてしまったりした際には、債権者からの矢のような督促を受けるのは自分自身なのです。
督促を無視して支払わないでいると、一括請求を求められたり、裁判を起こされたり、最終的には財産を差し押さえられたりするおそれがあります。
もちろん、滞納したことによりブラックリスト状態にもなります。
善意でした名義貸しによって、悔しい思いをしたり生活が一変してしまった方は多いです。借金での名義貸しは行わないようにしましょう。
もし、名義貸しをした借金の返済ができないとお悩みの方は、早急に債務整理を検討しましょう。
債務整理については後述しますが、借金を減額したり免除したりできる手続きです。何の債務整理が適切かなどは、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
名義貸しは違法?その罪の重さ
名義貸しをすると、違法行為として罪に問われる可能性があります。以下では名義貸しの危険性について、パターンごとに解説します。
パターン1:ブラックリスト状態の人に名義を貸す場合
先述したとおり、自分名義でお金を借りられない人のために名義を貸してしまうと、貸した人にその借金が降りかかるリスクがあります。
さらに最悪の場合、以下のような罪に問われることがあります。
・詐欺罪の共同正犯や幇助犯
名義を偽ってお金を借りるのは一種の詐欺です。
よってこのパターンの名義貸しには、金融機関に対する詐欺罪が成立するおそれがあります。
名義を貸した方は詐欺を共同で行うので詐欺罪の共同正犯が成立したり、少なくとも詐欺を手助けしたものとして詐欺罪の幇助犯が成立したりするおそれがあります。
詐欺罪が成立すると、10年以下の懲役刑が科されます。
パターン2:犯罪目的の人に銀行預金などの名義を貸す場合
特に注意すべきなのが「犯罪目的の人に銀行口座や携帯電話などの名義を貸すパターン」です。
「銀行口座を開設したり、携帯電話を契約したりするために名義を譲渡すると、一定の謝礼金が出る」という話を聞いたことはありませんか?
うまい話に思えますが、実はこの動きの大元は闇金業者や特殊詐欺グループであることがほとんどです。
犯罪収益移転防止法違反
まず、このような名義貸しは犯罪収益移転防止法に違反します。
犯罪収益移転防止法は、テロ資金やマネーロンダリング、振り込め詐欺などの金融犯罪によって得られた資金の移転を規制するための法律です。
犯罪収益移転防止法では、預金口座の売買が禁止されています。違反すると1年以下の懲役または100万円以下の罰金刑に科される可能性があります。
詐欺罪
銀行相手に名義を偽って口座を開設して利用すると、銀行への詐欺罪が成立する可能性もあります。
携帯電話会社へ名義を偽って携帯電話やSIMカードなどを取得した場合も同様です。
犯罪に巻き込まれる
犯罪目的の人へ口座や携帯電話を貸すと、それらは振り込め詐欺などの犯罪行為に使われるでしょう。犯罪が発覚したときに疑われるなど、犯罪に巻き込まれるリスクが発生します。
金融機関からの取引停止措置
口座の売却は金融機関との規約違反となります。発覚すると口座が凍結されたり、金融機関から取引停止措置をとられたりするおそれもあります。
パターン3:リスクのある会社の代表名義を押し付ける場合
3つ目は、リスクのある会社の代表を名義人に押し付けるための名義貸しです。
法的にグレーなビジネスを行う会社の場合、なるべくなら責任を取りたくないと考える人がいます。
そういった人は自分ではなく別の人を「取締役」「代表者」などとして登記し、自分は表に出ないようにするのです。
しかし、会社の取締役や代表者に関する名義貸しにも以下のようなリスクがあります。
取締役の責任が発生する
会社の取締役には、会社や第三者への責任、株主への責任などさまざまな責任が課されます。たとえば会社や株主などに損害を与えた場合には、損害賠償請求をされる可能性があります。
このとき、取締役として責任追及されるのは名義を貸している「表面上の取締役」です。
会社関係の事件では莫大な損害が発生するケースもあり、軽い気持ちで名義貸しをすべきではありません。
パターン4:許認可や資格を利用する場合
4つ目のパターンは、必要な許認可や資格をもつ人を利用するための名義貸しです。
たとえば宅建や医師免許、弁護士や司法書士などの士業の資格がターゲットとされるケースが多数です。
許認可や資格がない人が、その商売を営むために、資格のある人へお金を払うなどして、名義だけ借りて商売をするのです。
しかし多くの場合、資格の名義貸しや名義借りは違法です。
名義を貸した側には行政処分や課徴金、罰則が適用されるケースが多く、ときには資格を取り消されることもあります。
名義を借りた方は無登録営業となって厳しく処罰されます。
具体的な処分内容は各業法によって異なりますが、いずれにせよ重い処分を受けるものと考えましょう。
家族への名義貸しも違法なのか
名義貸しが行われるとき、家族や親族間である場合がよくあります。家族間であっても名義貸しは違法になるのでしょうか?
家族間でも、基本的に名義貸しは違法です。形式的には詐欺罪が成立することにもなりえます。
ただ、高齢の親のために携帯電話や賃貸アパートの契約をしてあげたいなど、名義を貸したい事情があるケースもあるでしょう。
そういった場合には、契約時に事情を伝えて理解を求めましょう。理解を得られれば詐欺にはなりません。
従業員のために会社名義でアパートなどを契約する場合もありますが、これについても不動産会社や大家が理解していれば問題ありません。要は契約の相手方が納得していれば問題になりにくい、という意味です。
ただし携帯電話代や賃借料を本人(名義を借りた側)が滞納すると、名義人が支払いをしなければなりません。そのリスクは承知した上で本当に名義貸しをしてもよいのか、慎重に検討してください。
名義貸しを頼まれた場合の対処法
もしも親族や友人などから名義貸しを頼まれたらどうすればよいのでしょうか?
基本的には断るべきです。
ただしいきなり断ると人間関係に支障が出る場合、まずは事情を聞いてみましょう。
その上で名義貸しに潜む各種のリスクを伝え、あきらめるよう説得してみるほかありません。
相手が困っていてどうしても助けたい場合には、名義を貸すのではなく現金を援助するなど他の方法をとりましょう。
名義貸ししたお金を請求された場合の対処法
もしも借金の名義貸しをしてしまい、本人が支払いを滞納したために自分に請求がきてしまった場合、どのように解決したらよいのでしょうか。
具体的な対処法を解説していきます。
本人に払ってもらう
まずは名義を借りた本人に確認を取りましょう。
うっかり支払い忘れた、1か月だけ支払いが遅れたが清算できるなどの理由があるのかもしれません。
本人に事情を確認し、できることなら早急に支払いをしてもらいましょう。
債権者と話し合う
名義を借りた本人が支払える状況でないなら、自分で対応できるかを検討します。
「名義を貸しただけだから支払いたくない」という気持ちはよく分かりますが、そう主張しても、通常は債権者が納得しないのです。
法的に支払義務がある以上、払わざるを得ないでしょう。
請求額を一括で払えない場合には、債権者と交渉して分割払いを認めてもらいましょう。
本人へ請求する
名義貸しをして本人のために債権者へ返済をした場合、本人へ支払った分の請求ができる可能性があります。
自分が債権者に支払った履歴をきちんと残しておき、その分を本人へ請求しましょう。
債務整理
自分でも返済することが難しい場合、債務整理を検討しましょう。
債務整理とは、払えなくなった借金を返済するための各種制度です。
主に、任意整理と個人再生、自己破産という3種類の手続きがあります。
任意整理や個人再生をすると、借金額が減額されるので支払いの負担が軽くなります。
自己破産をして「免責」が認められれば、税金など一部債権を除いた借金の支払義務が、すべて免除されます。
なお、名義貸しをしている場合に自己破産をすると、調査や状況観察などのために管財事件になる可能性が比較的高いと考えましょう。
管財事件になると、同時廃止よりも破産にかかる期間が長引いたり費用がかさんだりするなど、債務者への負担が大きくなります。
債務整理をすると、信用情報に事故情報が登録されて、いわゆるブラックリスト状態になります。ただ、名義貸しの借金を払えず滞納してしまった場合、ブラックリスト状態になることは避けられないので、「債務整理をしたらブラックリスト状態になるのでやりたくない」と考えることにあまり意味はありません。
請求額を支払えず、債権者と交渉することも難しい場合は、早急に債務整理を検討することが賢明といえます。
まとめ
名義貸しによる借金も、債務整理で解決できる可能性があります。
弁護士などの専門家に相談すれば、債務整理を含めた解決策をさまざまな観点から模索し、アドバイスしてもらえます。
弁護士などの専門家は、借金問題を前向きに解決したい方の味方です。
借金の原因が何であれ、専門家に怒られたり責められたりすることはありません。
その一歩を踏み出すことを応援しています。