事故や病気により障害を持つということは、誰にでも起こりえます。障害を持つことにより、これまで通り仕事をすることが難しくなる場合がほとんどでしょう。
そういった状況では、「借金をどう返済すればよいのか」「生活していけるのか」など不安でいっぱいになってしまいますよね。
今回は、借金がある方でも障害者基礎年金や障害厚生年金などの障害年金を受けることができるのか、借金の免除制度などはあるのか、また借金返済問題をどのように解決すればよいのかについて解説します。
- 障害年金は生活保護とは異なり、借金返済しながらでも受給することができる
- 障害年金や障害者手帳があることにより、借金返済が減免されるなどの制度はない
- 借金をこれまで通り返済できないと判断したら、早めに債務整理を検討する
監修
弁護士法人サンク総合法律事務所
代表弁護士 樋口 卓也
借金返済があっても障害年金を受給することができる
(引用:日本年金機構ー障害年金)
障害年金は、障害によりこれまで通り仕事や生活が出来づらくなった方にとって、心強い支えとなります。仕事をしながら障害年金を受給することも可能です。
生活保護の場合、借金返済があると原則的に受給ができません。生活保護費の中から借金を返済することが認められないためです。
では、障害年金の場合はどうなのでしょうか?
実は、障害年金は借金を返済している方でも受給することができます。「障害年金から借金を返済してはいけない」というような決まりもありません。
障害年金を受給する方法
障害年金は申請すれば誰でも受給できるわけではありません。障害の重さや年金の納付状況など、いくつかの条件を満たすことで受け取ることができます。
もともと国民年金に加入していた場合は「障害基礎年金」、厚生年金に加入していた場合は「障害厚生年金」を請求することになります。
請求のためには、まず病院に通って医師に診断書を書いてもらう必要があります。
そして診断書をはじめとした必要書類を添付して、障害基礎年金は「住所地の市区町村役場の窓口」(初診日が国民年金第3号被保険者期間中の場合は、「年金事務所」または「年金相談センター」)、障害厚生年金は「年金事務所」または「年金相談センター」へ申請書を提出しましょう。
その後審査が行われ、認定が下りたら障害年金が支給されるようになります。
必要書類や届出先について詳しくは、日本年金機構の公式サイトをご確認ください。
障害年金や障害者手帳により、借金返済が免除されることはない
障害年金とは申請先や審査基準が異なりますが、障害者手帳もあると色々なメリットがあります。
たとえば、障害者手帳を持っていると、医療費やリフォーム費用などの助成や、所得税・住民税などの減免が受けられたり、各種の公共交通機関が安く利用できたりします。
このような優遇措置の中に、借金の減免は含まれていないのでしょうか?
障害年金や障害者手帳があることにより、借金返済が猶予されたり、免除されたりする制度はありません。
債権者に直接事情を話し、交渉して、返済期間を延長してもらうことなどはできるかもしれませんが、債権者がその交渉に応じなければ、「障害を持ち思うように収入が得られない」という事情があったとしてもこれまで通りの返済をする必要があるのです。
借金返済に困ったら債務整理を検討する
障害により生活や仕事が制限され、借金返済ができないと感じた場合、どのような解決方法があるのでしょうか?
債権者に対し、「返済期間を伸ばして、月々の返済額を減らしたい」などの相談をしても、応じてもらえなかったり、応じてもらえても、長期返済により支払う利息の総額が膨大になってしまうなどのリスクが発生します。
かといって、家族に肩代わりしてもらうことが難しい方も多いでしょう。
そのような場合は、債務整理を検討してみましょう。
債務整理とは、裁判所へ申立てをしたり、債権者と直接交渉したりして、借金を免除・減額したり、返済期間を延長することなどによって、借金問題を解決していく手続きの総称です。
債務整理手続きには任意整理、個人再生、自己破産などがありますが、障害年金を受給しているからといって、選択してはいけない債務整理手続きは特にありません。
なお生活保護を受給している場合は、生活保護費での借金返済はできないので、返済が残る手続きは選択することは出来ず、自己破産が選択されることが通常です。
それぞれの手続きについて、詳しくは以下の通りです。
任意整理
任意整理は、債権者と交渉して、将来利息をカットもしくは大幅減額してもらったり、返済計画を長期にしてもらったりすることで、返済の負担を軽くする手続きです。
弁護士などの専門家に依頼して手続きを行うと、債権者との交渉などを任せられるため負担が少なく、また、良い条件で合意ができる確率も高いです。
個人再生
個人再生は、借金が支払えなくなった時に、裁判所に認めてもらい、借金を大幅に減額してもらう手続きです。
ローン返済中の車などは基本的に引き上げになってしまいますが、それ以外の財産は保有し続けることが出来ますし、自宅については、一定の条件を満たせば、ローン返済中でも保有し続けることが出来るため、手放したくない財産がある方は個人再生を検討してみましょう。
ただ、手続き後に返済が残るため、収入が安定している必要があります。
障害年金を主な収入源としている方が個人再生を申し立てた場合、「障害の治癒などにより受給額が減る・受給資格がなくなる」という可能性を加味され、認められないおそれもある(裁判所によって個別に判断される)ため、慎重に対応する必要があります。
全て個人で判断したり、裁判所とのやりとりを行うことは困難と言えます。まずは弁護士などの専門家に相談してみましょう。
自己破産
自己破産は、借金が支払えなくなった時に、裁判所に申立をして、税金や健康保険料など一部の例外はありますが、借金の返済を免除してもらえる手続きです。ただし生活に最低限必要な限度を超える財産は、基本的に保有し続けることはできません。
「障害年金は受給できるが、生活するだけでいっぱいいっぱいだ」「怪我や病気でこれまで通りの収入が得られず、障害年金も受給できない」など返済不能の事情がある方は、早急に自己破産を検討しましょう。
債務整理の注意点
その方の状況に合わせて、最善の方法で借金問題の解決を目指せる債務整理ですが、全ての手続きに共通する注意点として「ブラックリスト状態になる」ということが挙げられます。
いわゆるブラックリスト状態とは、信用情報機関に事故情報が登録され、新しくローンを組んだりクレジットカードを作成したりする際に、審査に通りづらくなることをいいます。
債務整理をするとブラックリスト状態になり、手続き後または借金完済後、5~10年間ほど新規借入がしづらくなるのです。
ただ、ブラックリスト状態は債務整理特有のデメリットではありません。借金を2~3ヶ月滞納すると、やはり信用情報機関に事故情報が登録されるケースが多いです。
「借金返済がこれまで通りにできない!」と思ったら、借金を滞納・放置して督促や遅延損害金に悩まされるより、早めに債務整理を検討する方が賢明でしょう。
まとめ
障害年金は生活保護とは異なり、借金返済しながらでも受給することができます。
障害年金や障害者手帳があることにより、借金返済が減免されるなどの制度はありません。
借金をこれまで通り返済できないと判断したら、早めに債務整理を検討しましょう。
弁護士などの専門家に依頼することで手続きの負担は軽く済み、適切な手続きを選択できるため成功率も高くなります。
少しでも不安がある方は、まずは専門家に相談してみることをおすすめします。