
住宅ローンを組んで家を購入した方は、債務整理をする際に注意が必要です。
選択を間違えると、家を失ってしまうリスクがあるからです。
今回は、個人再生の「住宅資金特別条項(住宅ローン特則)」を使ってローン返済中の家を残す方法をご紹介します。
- 個人再生の住宅資金特別条項(通称 住宅ローン特則)とは、住宅ローンについては従来どおり(又はリスケジュールして)返済し続けることによって,自宅を処分されないようにしつつ、個人再生でその他の借金のみ減額できるという方法
- 住宅資金特別条項の効果には、代位弁済をなかったことにできる、競売も中止できる、住宅ローン自体のリスケジュールも可能 などがある
- 住宅資金特別条項には条件があり、住宅ローン滞納が長引くほど不利にもなってしまうため、個人再生を検討する場合は弁護士に相談する
結論:住宅資金特別条項とは個人再生で住宅ローンを払い続けながら他の借金を減額できる制度。利用期限あり。
監修
弁護士法人サンク総合法律事務所
弁護士 今枝 利光
個人再生の住宅資金特別条項(住宅ローン特則)とは?仕組みをわかりやすく解説
住宅ローンを組んでいる方が自己破産をすると、本人名義の住宅は原則競売にかかるか、任意売却という方法で売却することになります。
そんなとき、個人再生の住宅資金特別条項(通称 住宅ローン特則)が適用できれば、ローン返済中の家を効果的に守れます。
住宅資金特別条項とは、住宅ローンについては従来どおり(又はリスケジュールして)返済し続けることによって,自宅・マイホームを処分されないようにしつつ、個人再生でその他の借金のみ減額できるという方法です。
住宅資金特別条項で得られる4つの効果
住宅ローン以外の借金を大幅に減額できる
住宅資金特別条項を利用すると、住宅ローンの支払いはそのまま残して他の借金のみを減額できます。
たとえば住宅ローンの返済が月に6万円、住宅ローン以外の返済額が月に6万円、合計12万円になっている方が住宅ローン特則つきの個人再生をすると、住宅ローン以外の返済を2万8,000円程度にまで下げられる可能性があります。
毎月の返済額が12万円から8万8,000円(住宅ローン6万円+他の借金2万8,000円)程度に下がるので、返済を継続できる可能性が高くなるでしょう。
もし、より具体的に個人再生を検討したい・自分の場合はどうなのか知りたいという場合は、弁護士への無料相談をおすすめします。
代位弁済をなかったことにでき、一括請求を回避できる
住宅ローンの返済を長期間滞納すると、保証会社が代位弁済(債務者の代わりに借金を立替え払いすること)をします。
代位弁済が起こると、債権者が銀行から保証会社へ変更され、保証会社から残ローンを一括請求されてしまいます。そうなると、住宅を守るのは極めて困難となるでしょう。
住宅資金特別条項を利用した個人再生が認められれば、代位弁済をなかったことにできます。元のように銀行などの住宅ローンの債権者へ分割払いできるので、住宅を失わずに済むチャンスを得られます。
進行中の競売も中止できる可能性がある
住宅ローンを長期にわたって滞納していると、保証会社が競売を申し立てます。競売が進めば、住宅が他の人に購入されてしまい、住宅に住み続けることができなくなります。
住宅ローン特則つきの個人再生を申し立てれば、裁判所から「抵当権実行の中止命令」を出してもらい、競売が止められる可能性があります。その間に個人再生を進めれば、家を守れる可能性も出てきます。
個人再生には、競売が始まっていても中止させて家を守れる効果があるといえるでしょう。ただし、個人再生自体が認可される見込みがなければ、中止命令は発令されません。
住宅ローン自体を最大10年リスケジュールできる場合がある
住宅資金特別条項つきの個人再生を利用しても、住宅ローン自体は基本的に減額されません。そのままではやはり返済がきついという方もおられます。
そういったケースでは、住宅ローン返済方法そのものをリスケジュールできる可能性があります。
リスケジュールとは、具体的には住宅ローンの返済期間を最大10年延長し、毎月の返済額を抑えるという方法です。
ただし、延長期間は最大10年までで、債務者が完済時に70歳未満でなければなりません。さらに、ローンの返済が長期化することにより支払う利息の総額が増えるという注意点もあります。
以上のように、個人再生の住宅資金特別条項には家を守るために効果的な制度がたくさん用意されています。
住宅ローン返済中で、「家を失わずに債務整理したい」という方は、住宅資金特別条項つきの個人再生を検討してみましょう。
住宅資金特別条項付き個人再生が向いている3つのケース
以下のような状況であれば、住宅資金特別条項付きの個人再生を検討できます。
住宅ローン以外の借金が任意整理では解決できないほど膨らんでいる
住宅ローン以外の消費者金融やクレジットカードなどの借金が、収入に対してあまりに大きい場合は、任意整理をしたとしても借金問題が解決しないことが多いです。
任意整理で解決しないほど、住宅ローン以外の借金が膨らんでいる場合は、住宅資金特別条項つきの個人再生の方が効果的な場合があります。
競競売が申し立てられ、住宅が差し押さえられている
任意整理では競売を止められません。いったん競売が開始されてしまうと、住宅が残せる債務整理として可能性があるのは住宅資金特別条項付き個人再生しかありません。
ただし、競売手続きが進んだら個人再生でも家を守れなくなるので、検討するのは早ければ早いほど良いです。
個人再生後も住宅ローンを継続して返済できる収入がある
住宅を守るためには、住宅ローンの返済をしなければなりません。
個人再生をしても、住宅ローンそのものを払えない状態だと住宅を守れないので注意が必要です。
そもそも収入がない、あるいは少なすぎてどうしても住宅ローンを払えない、ということであれば、住宅の売却か自己破産を視野に入れる必要があります。
住宅ローン特則つきの個人再生を検討すべきなのは、「住宅ローンの返済能力がある方」に限定されます。
上記が、住宅資金特別条項付き個人再生を検討できるケースです。
気をつけたいのが、「この場合は住宅資金特別条項付き個人再生ができる」というわけではなく、あくまで検討の余地があるということです。
個人再生はそもそも非常に複雑な手続きです。「自分の場合、住宅資金特別条項付き個人再生にチャレンジできるのかな?」と考えている場合は、まず弁護士に相談してみましょう。
住宅資金特別条項を利用するための5つの条件|該当しないケースも解説
個人再生の住宅資金特別条項を利用できる可能性があるのは、以下のような条件を満たす人です。
自分名義の住宅を所有している
対象の住宅は、自分名義の住宅でなければなりません。他人や家族名義の家には住宅資金特別条項を適用できません。
自宅として利用している
対象の家は、基本的に債務者が自宅として利用している必要があります。他人に賃貸していると、基本的に利用できないと考えましょう。
ただし店舗付住宅や二世帯住宅の場合には「床面積の2分の1以上」を自宅として利用していれば要件を満たします。
住宅ローン以外の抵当権・差押えがついていない
住宅には、住宅ローン以外の抵当権がついていないことが必要です。たとえば住宅を担保に別の銀行や個人からも借金をしている場合や税金等を滞納し住宅が差し押さえられている場合は、そちらの借金や滞納分を抹消しなければ適用できません。
住宅の購入・建設を目的としたローンであること
抵当権の目的となっている借入は、住宅建設や購入のためのローンでなければなりません。
住宅と無関係な事業用ローンなどの抵当権がついている場合、住宅資金特別条項を利用できません。
保証会社が代位弁済してから6ヶ月以内
保証会社が代位弁済して6ヶ月が経過すると、住宅資金特別条項の適用はできなくなります。
他にも以下のような場合は、住宅資金特別条項を利用できないので注意しましょう。
住宅資金特別条項を使えない例
- 店舗兼住宅で、店舗の床面積が3分の2、自宅の床面積が3分の1
- 二世帯住宅で、自分の利用している床面積が2分の1未満
- 住宅ローン以外に「おまとめローン」の抵当権が設定されていて、抵当権の解除に同意してもらえない
- 投資用のマンションで、自分は居住していない
- 代位弁済後、7ヶ月が経過してしまった
このように、住宅資金特別条項の利用条件は多く、複雑です。
そもそも個人再生自体、様々な要件があり、申し立てをして必ずしも認可されるとは限りません。
個人再生手続きが最適なのか、住宅資金特別条項を利用できるかどうかなどは個人で判断することが困難です。お悩みの場合は、速やかに弁護士に相談しましょう。
住宅資金特別条項を利用する前に確認すべき注意点|税金滞納は要注意
・税金滞納している場合には要注意
住宅資金特別条項を利用するとき、固定資産税や住民税などの税金を滞納していたら要注意です。
個人再生をしても、税金は減額されません。
税金を滞納していると、国や自治体に家を差し押さえられて公売にかけられてしまうおそれがあります。家を差し押さえられると、先述した通り住宅資金特別条項付きの個人再生を利用できません。
万一、税金滞納によって国や自治体から家を差し押さえられてしまったら、差押えを解除してもらう必要があります。税金を完納するか、話し合いをして分納する代わりに差し押さえ解除を認めてもらいましょう。
自分では対処できない場合、早めに弁護士に相談するのが最善です。
まとめ
住宅ローンの返済が厳しくなっても、住宅資金特別条項つきの個人再生をすれば家を守れる可能性があります。
住宅ローンの返済を滞納してから時間が経てば経つほど不利になってしまうので、困ったときにはできるだけ早めに弁護士に相談しましょう。